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【第9章】 「自分も毒親かも」と気づいたら——今日から関係を修復する


◆この章でお届けしたいこと: 親側が「自分にも問題があったかもしれない」と気づいたとき、それは、敗北でもなく人生の終焉でもなく、幸せへの出発点です。

1 気づけたことは、すでに大きな一歩

 この本を読んで、「もしかすると、自分も子に同じことをしていたかもしれない」と不安になった方もいるかもしれません。
 もし、そう感じた方がいらっしゃったら、そこで絶望する必要はありませんし、自分で自分を責めて心を病む必要もありません。
 むしろ、自分の言動を客観的に振り返れたことは、親子関係を修復してお互いに幸せに向かえるための、大切な第一歩になるのです。
 「自分は絶対に正しい」と思い続けたり押し通し続けたりするより、「間違えたかもしれない」ととらえられる方が、より成熟した頭脳や感性がある人、ということかと思われます。
 問題なのは、毒親が毒親であることを自認できていなかったり、毒親であることに開き直って虐待を続けたりすることです。
 毒親かも、と、自分で自分を客観的に見つめなおせた方は、自分で自分の心を癒していく可能性が開かれます。
 自分が知らぬ間に、復讐心や不公平感にとらわれていた状態から脱出し、過去の心の傷を癒し、自分にとっても、子にとっても、お互いに幸せになりあう取り組みに進めそうです。
 その際、できれば、心療内科や精神科などでの医師やカウンセラーなどに、アドバイスをもらっていければより良いかと思われます。
 心や意識の変化の際は、「心の脱皮」というか、心や感受性が一時的にデリケートだったり不安定だったりしがちです。
 その際に、医療上のアドバイスなどがあると、ダメージを受けやすく心がもろくなっている状態になったとしても、安心してスムーズに次のステップに進みやすいかもしれません。
 子としては、毒親が、もし、「心の脱皮」をはじめたとしたら、そこは絶好の復讐ポイントだと思ってしまう方がいるかもしれませんが、安全を確保して「心の脱皮」を見守ることができたらより良いことかと思われます。
 また、その際に、子の復讐心や不公平感が暴発しないよう、見守れるだけの心の余裕を保っていられるように、普段の段階で、心身の距離をしっかりとって、心身を消耗させ切らないようにできれば良いかと思われます。
 ムリやり毒親の皮をはいで脱皮させるのではなく、毒親が自ら必要性を感じ取って、自ら次のステップへと進めるように、自然と「心の脱皮」に至るなら、それがより良いことと思われます。
 大切なタイミングで、心身の余裕を持てるよう、「心の余力」を普段から貯めておけることは、良き家庭環境や良き親子関係への大切な所で対応を間違いにくい普段からの備えになるのかも…。



2 まず、いま起きている行為を止める

 もし、あなたが、悪意がなかったとしても、ついつい、子に怒鳴る・脅す(または脅すような言動をとる)・人格を否定する・経済的支援を服従の道具にするなど、明らかに子の心身を損なう行為があるなら、理由づけより先に止めましょう。
 理由を子に説明することは、親が子に及ぼす虐待や負の影響を止めた後でもできることです。
 まず、子の安全や安心を最優先にする。
 それが、毒親からの「心の脱皮」と親子関係の修復の土台となるでしょう。



3 謝罪は権威を失うことではない

 「さっきは言いすぎた。怖い言い方になってごめん」
 「あなたの話を聞かずに決めつけて申し訳ない」
 こうした具体的な謝罪は、親の権威・人格・沽券を壊すのではなく、「間違っても謝罪できる」という、人間としての懐の深さを示すものでしょう。
 いわゆる「謝ったら死ぬ病」といわれるような、謝罪したら自分の人格を自分で否定させて存在意義も失われてしまう、ということではありません。
 親も子も、「誰に」従うかではなく、「何に」従うかを大切にしてもらえたら良いのではないかと思います。
 「誰に」従うか: 親だから子は従え、人生経験が豊富だから子は親に従え、など。
 「何に」従うか: 親であれ子であれ、人生経験が豊富であれそうでなかったとしても、人権・法
令・心理的安全性などの「正しさ」に従う対応
 で、親が間違うこともあれば、子が正しいこともあります。
 年齢・性別・実績などに関わらず、正しいかどうか。
 ただし、あなたが子に謝罪する言葉の前後に、
 「でも、あなただって悪い」
 と付ければ、毒親の謝罪を装った子への非難になり果てます。
 子に改める部分がある場合でも、まず、自分の改める部分をしっかり引き受けることが大切です。
 毒親が「心の脱皮」をすると伝えた後に、時を改めて、子に改める部分があれば、伝え方や接し方が子の心理的安全性も身体的な安全性も損なわないよう工夫して、ともにより良き家庭を目指して改め合えば良いのです。



4 いきなり100点の親を目指さない

 毒親の長年の癖や習性などは、気づいた翌日にすべて消え去るものではないかもしれません。
というか、それくらい、サクッと改悛の情を発揮できるなら、どもそも、毒親になっていないかもしれませんよね。
 毒親の「心の脱皮」には、時間がかかることもあります。
 まず、「悪い親をやめる」、次に、「ニュートラルな(悪くも良くもない)親になってみる」、そして、少しずつでも、「安心を増やせる親になる」という感じ…。
 演技性の強い毒親だとしたら、「心の脱皮」をすると言ったのに、またこんなことして…、ということもあるかもしれませんので、子として、あまり期待しすぎない方が良いかもしれません。
 期待しすぎないことは、絶望することでも、期待してはいけないことでもありません(ほどほどに…)。
 子がすぐに信頼を戻してくれなくても、自然なことかもしれません。
 これまで、毒親にさんざん心身を痛めつけられ、心を寄せようと近づいても突き飛ばされ、期待しても変わらず、それでも、親子のつながりを求め続けていた子だったりするのですから…。
 安直な「もう大丈夫。すっごく良い親になったから」といった気休めやウソは、子への更なる失望を与えかねませんので、そのようなものは不要です。
 うわっ面でも言えて騙せる「言葉」で示すよりも、身をもって実践する「行動」で、子の信頼を取り戻せるよう、少しずつでも言動を改めて行けると良いでしょう。
 子が、許してくれない・受け入れてくれないからといって、そこで元・毒親が怒るのは、親の身勝手が過ぎることでしょう。
 こうすれば必ず子は信頼を寄せ親を許す、というわけではないとしても、これまでの毒親としての反省を行動で示し続け、いつか、少しずつでも信頼され、許す方向に向かうのを願いつつ…。
 傷ついた子の側には、回復する時間を決める権利があります。
 子の心身や親への信頼が回復しても、完全に許しきるかどうか、部分的に許すにとどめるかなども、親に強制されず、「常識的に考えてこうだろ」と強要されず、子に決める権利があります。



ミニワーク⑦ 親としての修復プラン

・自分が止めたい言動をいくつか書き出してみる。

・その止めたい言動が、止められないで、つい出てしまうのは、どんな時・どんな状況・どんな思いがあるか、前兆(疲れ、酒、仕事のストレス、時間不足など)をそれぞれ書き出してみる。

・「あなたにも悪い部分がある!」ということ抜きに、子に対して、どんなことを謝りたいか・謝るべきだと思うかを、いくつか思いつけば書き出してみる。

・自分で心をコントロールしたいのに、うまくできない(例:ついアルコールを飲んで悪態をついてしまう、ついカッとなって怒鳴ってしまう、など)ケースはないか、書き出しておき、なるべく早く心療内科や精神科やカウンセラーに受診したりアドバイスを求めたり、支援団体の相談窓口に相談してみる。



5 「悪くも良くもない親」から始めていい

 自分の言動を振り返って「もしかすると毒親的だったかもしれない」と気づいたとき、いきなり理想の親へ生まれ変わろうとすると、却って、長続きせずに終わってしまうかもしれません。
 いま起こしてしまっている子への害を止めること。
 怒鳴る回数を減らしてみること。(無いのが一番ですが…)
 脅しや脅すような言動をやめること。
 お金や物や食事などを、子を支配する道具にしないこと。
 できるところから、「悪くも良くもない親」として、ニュートラルなところに戻れたら、それだけでも大きな進展でしょう。
 虐待をするでもなく、積極的には支援をするでもなく、負の影響を及ぼさないけどプラスの影響も特には及ぼさなかったり、害もご褒美も与えてくるたりするわけでもなかったりして、そこにいて、とりあえず、害はない親…。
 まずは、そこを最初に目指すステップにするくらいで良いのではないかと思います。
 一足飛びに、聖人君主の完全無欠な良い親、といった具合にはいかないでしょうし、そんな親は世の中のどこにもいないかもしれません。
 少なくとも、毒親の状態から、毒をデトックスできれば、それだけでも十分だと思います。
 あとは、どれくらい、自分で「良き親」を目指すのか、また、そもそも、何をもって「良き親」とするのか、試行錯誤しながら、子とともにある関係性の中で、落としどころをつけていく感じかもしれません。
 子の話を遮らず、頭ごなしに価値を決めつけずしっかり聞く。
 親が間違っていることは、子に誠実に謝る。
 親として都合が悪いかどうかではなく、子の最善を優先する。
 家庭外の相談窓口に、子だけでも親子一緒にでも相談する。
 といった、プラス要素を少しずつ積み上げていけば良いと思います。
 謝ることは敗北や自分の存在意義の崩壊でもなく、謝ることで自分の存在意義や人間としての懐の深さが深みを増す、ということは、いつも意識しておいて頂ければと思います。
 「過去の自分」を守るために、今、そして、これから大切な問題を否認し続けることなく、これから改めて親子関係・家庭関係を築き深めるために、ちょっとした行動から変えてみましょう。



6 謝罪を「許してもらうための取引」にしない

 謝ったからといって、子と、すぐ元通り(というか、「元通り」だと、また毒親の支配や虐待や負の影響のもとにある親子関係になってしまいますね…)になるとは限りません。
 元通りになるというより、毒親の問題を謝り改めることから、新たにお互いにとってより良い親子関係を築いていく上で、今度は、親がすぐに成果を求めないことが大切でしょう。
 子が距離を取りたい、まだ話したくない、しばらく様子を見たい、といった思いだったり、警戒心をもって心身の距離を取りたいと思ったりすることもあり得ます。
 謝罪は、相手からすぐに許しや親密さを受け取るための取引ではなく、自分の責任を自分で誠実に引き受ける行為です。
 「謝ったのだから、子は、すぐに許して親の言う通りにしなければならない」とか、「謝ったのだから、子は、親を許すべきだろう」などと急かさず、子の心身の回復と許しをちゃんと待つ。
 それ自体が、謝罪を言葉だけでなく、行動として、子に示すために、言葉より雄弁に語る言動を通じた謝罪になるものと思われます。
 そして、親子の関係を、「支配と服従」から、「親も子もお互いに尊重しあう」関係に変えるために、許しも癒しもせかさずに、子の任意の意志や希望や状況を尊重することを通じて、少しずつより良いものにしていければ良いでしょう。

◆ 今日の一歩:毒親として思い当たる行為が一つあるなら、まずその行為を止めることを優先してみてください。そのうえで、言い訳を足さない誠実な謝罪と、次にどう行動をもって関係改善につなげるかを考えてみましょう。





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