『がんと心のリゾート: がん患者のメンタルケアと闘病を支援する家族の視点』
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本書をお読みになる前に
【この本の成り立ち】
この本の土台になっているのは、妻の退院後の生活を、夫である私がスマートフォンに書きとめ、新型コロナウイルス感染症の大流行の時期で、面会すらままならなかった宮崎にいる妻のご両親への報告にも使ってきた「おうち入院カルテ」です。
元の記録は数百ページに及びますが、本書では、そのすべてを時系列のままに単に並べるのではなく、家族の中で起きた出来事のあるがままが伝わるシーンや、妻の回復の節目や、夫として私が迷いながらも考え行動してきたことを選び、読み物として再構成しました。
「アップしても油断せず、ダウンしても悲観せず」「自分を責めずに堂々とラクをする」「心の余力」「プラス方向に全力で『逃げる』」「心のカイロプラクティック」「心の防波堤」など、こういった言葉は医療用語ではなく、私が日々の闘病支援の中で妻にも自分にも言い聞かせるように紡ぎだした造語です。
闘病の中で、私たち家族が心の状態を少し理解しやすくし、重苦しく出口の見えない上り坂のトンネルを進むかのような日々の中で、自然と生まれた言葉や言い回しだったりします。
本書は、私の妻・戸村妃美(とむら きみ)が39歳で大腸がんとなり、その衝撃をきっかけに心の調子を大きく崩し、一時は急性精神病性障がいとして、精神科病棟への入院(配偶者として医師より同意書にサインを求められた閉鎖病棟への医療保護入院)をはじめ、紆余曲折を経ての大腸がん手術や、退院後の長いメンタル不調からの療養などを経験した日々について、夫の目線からまとめた手記です。
「おうち入院カルテ」は、妻本人の意思と了解を得たうえで公開したもので、親族や医療関係者、学校関係者などについては、プライバシー保護の観点から一部を匿名化し、細部を割愛・整理しています。
がん手術から自宅療養をしてしばらくの間は、妻ががん罹患やメンタル不調について、ほぼ家族以外に知られたくないという状況だったりしましたので、その際は、私がお仕事をお断りしなければならない際も、詳細について伏せてクライアントさまにお伝えしたり、息子の学校などでやむなくお伝えしなければならない場合にも、病状・病歴などの要配慮の個人情報として、一部の教員の方のみでとどめて頂くようにしておりました。
もともとの記録の雰囲気を残すため、私が妻を普段から呼んでいる「妃美ちゃん」という呼び方を本文でも用いています。
そして何より予めご注意頂きたいこととして、本書は医療書でもありませんし、私(戸村智憲)は医師ではありません。
「おうち入院カルテ」や「お話しカウンセリング」や「8つの薬」や「3つのアプローチ」などは、国連での激務などから過去に私(戸村智憲)自身が、うつ病やパニック障がいの罹患経験がある中で、自分の当事者経験を活かして妻の支援に取り組んできた実体験から生まれた私なりの表現です。
医療上の診断・治療・服薬判断などに代わるものではありません。
心身の不調がある場合は、必ず、心療内科や精神科などの医師をはじめとする医療の専門家にご相談頂き、それぞれの状況に合った支援を受けて頂ければと思います。
これは、「こうすれば治る!」といった本ではありません。
ただ、病気になった本人のそばに寄り添って、家族が何を考え、どんな思いを抱き、何に救われ、どのように一日一日をつないできたのかを、あるがままにお伝えする書籍です。
【主な登場人物】
戸村妃美(とむら きみ)――私の妻。39歳で大腸がんが見つかる。看護師として医療現場で働き、大学で非常勤講師として看護教育にも携わってきた。一児の母。がんをきっかけに心の調子を大きく崩し、精神科病棟への入院と長い回復の日々を過ごす。
戸村智憲(とむら とものり)――本書の著者であり戸村妃美の夫。「おうち入院カルテ」をまとめたおうち入院の「院長」として、医療機関と連携しながら、医師や看護師などでは手の届かない細かなところや日常からのケアに努め、家庭での生活・家事・育児・服薬の確認・対話などを通じて妻の回復に伴走している。
息子――当時小学生。本書ではもともとの記録に合わせ「ゆうちゃん」と記す箇所がある。母(戸村妃美)の病気を子どもなりに受け止めながら、家族の日常を一緒に生きた。
※医療関係者、学校関係者、親族・知人などは、プライバシー保護のため原則として匿名化しています。
【本書で使う言葉について】
「おうち入院」――退院後、自宅でムリせず慣れた環境でゆったりと妻に療養してもらえるよう、自宅療養のことを「おうち入院」と呼ぶことにしました。精神科病棟で妻の主治医から、退院後に自宅でムリしないようお話しを受けた際に、妻に、「おうち入院」として、自宅で夫がケアしてくれる状態で療養します、と伝えてもらい、主治医としてもご安心して退院の判断を頂くこととなりました。
「お話しカウンセリング」――妻が落ち込んだり心が苦しかったりする時に、最長は連続で6時間くらい付き合いましたが、私(夫)が医師や看護師などによる医療行為ではなく、日々の傾聴や対話を通じて妻の心が癒されやすいよう、時間をとって話を聞き合うことを「お話しカウンセリング」と呼んでおります。24時間・365日体制とで、深夜でも早朝でも、長時間でも短時間でも、妻とじっくり対話して、医療機関でもケアしきれないほどに伴走できればと思ったりしておりました。
「8つの薬」――「ことばぐすり」など、妻を支えていく中で、私が大切にしようと思ったことのたとえ・比喩的な表現ですので、医療用語などではありません。実際の診断・治療・服薬などは、適宜、継続して受診している大学病院の主治医などの判断に従い、安易な決めつけや素人判断で「診断」することのないよう、慎重に対応しております。
本書中の「実録カルテ」は、もともとの手記の記録や家族へのSMSをもとに、個人情報等を伏せ、読みやすさのため表現を整えたものです。妻の発言はもともとの記録に残るものだけを使い、新しい発言を創作は避けております。
Table of Contents
- 【はじめに】 手術は成功。でも、闘病は終わらなかった
- 【第1章】 突然、「がん患者の家族」になった
- 【第2章】 手術より先に、心が限界を迎えた
- 【第3章】 ようやく迎えた、がん手術の日
- 【第4章】 退院。そして「おうち入院」が始まった
- 【第5章】 心の回復は一直線ではない
- 【第6章】 支える家族の心も揺れている
- 【第7章】 夫婦で見つけた「心のリゾート」
- 【第8章】 「おうち入院」から社会へ
- 【第9章】 がん患者を支える家族として伝えたいこと
- 【終章】 がんと心のリゾート
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【付録1】 「おうち入院」8つの薬と3つのアプローチ
【付録2】 私たち家族の主な歩み
【おまけ】 「おうち入院」の中から生まれた夫語録




